メロスは激怒した。──という強烈な文章から始まる『走れメロス』。
あなたも学校の授業で学んだことがあるかもしれません。
そんなイメージが記憶にあるのでは? しかし、ここだけの話……、実は作者の伝えたいことって、もっと別のことだったりするのです!
ここでは『走れメロス』の作者、あらすじ、そして本当のメッセージとは何か?──について、お話します。
『走れメロス』とは
『走れメロス』は、古代ギリシアの伝承と、ドイツのシルレルという人の詩を元に創作された物語で、1940年、新潮にて発表されました。
『走れメロス』の作者は?
作者は、太宰治です。
でも……太宰ファンには少し意外に思えるかもしれません。
(なんだか知ってる太宰とは少し違うな……)
たしかに文章の切れ味や、散りばめられたユーモアは、心の師「芥川龍之介」にも通づるものがあります。しかし、何かが違う……。
先ずは「あらすじ」を、おさらいしてみましょう!
『走れメロス』のあらすじ
以下が、大まかな流れです。
超・簡潔にお話します。
メロス(主人公)が妹の結婚準備のために、シラクサという街に出掛けました。するとその街の王様ディオニスが暴君となって大暴れ。なんと、気に入らないひとをバンバン殺しちゃったりしてたのです!
それに怒った我がメロス。「そんなことしちゃ駄目じゃん!」と、王様に文句をつける。すると……、
まあ、捕まります。そりゃ、ま、そうだ。だって相手は暴君なのだもの。逆らったりしたら死刑です。
「──いや、ちょっと待ってよ! 僕は殺されたって良いのだけれど、……せめて、妹の結婚式が終わるまで待っててよ!」
メロスは王様に直談判。
「この街に親友のセリヌンティウスって奴がいるのだけれど、そいつを人質にしちゃって良いからさ!」
セリヌンティウスは快諾します。
「メロスを信じるよ、何と言っても親友だものな」
ディオニスは笑います。
「いいよ、三日間だけ待つよ」
(信じる? 親友? 何それ美味しいの?)
こうして、王様との約束を守るため、そして身代わりになってくれた親友を助けるために、メロスは走るのです!
走るのですうっ!
と、まあ、親友との絶対の友情を描いた、感動的な物語です。
ねえ、もっと丁寧に説明しておくれよ。
……すみません(だ、太宰先生?)。
『走れメロス』で何を言いたかったのか?
メロスは走りました。
もう間に合わないかもしれない!──それでも走りました。
もっと大きなものを守るために。
一般的には、こう習う
という王様の心と、
というメロスの心がバトルするわけですが、……まあ、結局はメロスが頑張って、信じるチカラが勝利し、王様も「やっぱり信じるって気持ちは絵空事ではなかった!」となり、云々かんぬん……。
そして、
信じる心、誠実な心を失ってはならない!
と、学びます。
少々乱暴に書いてしまいましたが、概ねこのような内容だと思います。
しかし実際は?
しかし、太宰はアスペルガーです(モノを見る角度や作品の内容、エピソードなどから判断すると、間違い無いと思います)。
やはり相手よりも自分です。
もちろん相手の立場を思う気持ちはありますが、それよりも自分(メロス)が実際に苦しんでいる様子を伝えたかったはずです。
そこから考えると、太宰の言いたかったことの中心は、友情物語ではなく、
その1点に尽きると思います。
他にはありません。
もちろん、作家ですから色気を用いますよ。できれば美しい物語に仕上げたいです。できれば読者に気に入られたい……。ですから、信じることの大切さを前面に仕上げたのだと思います。
それでは授業では何故、本当の苦しみをテーマの中心にしないのか?
それは義務教育を受ける年代では、意味が解らないからだと思います。……と、いうより、この太宰の苦しみは、アスペルガー特有のものです。
そこに理解がないと、ほんとうの苦しみを理解することは出来ないからでしょう。
そうですよね、太宰先生?
君は大胆なことを言うね。
『走れメロス』の裏話
実は太宰先生、この作品を書く少し前、やらかしちゃっています。
あるとき、いつものように友人と遊びまくり、宿代まで使い果たした太宰は、いっしょにいた友人を、なんと宿の人質にしちゃったのです!(お金を取りに行って来るから、戻るまで友人は借金のかたね♪ ってやつ)。
「借りてきてやるから、心配するな!」
太宰は、威張って言い放ちました。
でもね、ちっとも戻って来ないのですよ、太宰先生は……。
痺れを切らした友人は、宿に事情を話し、太宰の元へ駆けつけます。すると……?
太宰はね、散々お世話になっている(というより迷惑をかけてる)井伏にね、言い出せなかったのですよ。お金を貸してくれって……。
そりゃあ怒りますよ、友人は。
誰がどう見たって、太宰は遊んでいただけなのですから。
そこで太宰は言うのです。
おう、逆ギレでも格好良い、太宰さん!
でも、……きっと苦しかったのです。
「借りてくる!」と、啖呵を切った以上、「借りられなかった」なんて言えませんし、井伏に対しても、これ以上に迷惑をかけられない。言わなきゃ! 言えない。でも、友人は待っている!……これは、本当に苦しいです。アスペには耐えられません……。
その友人(檀一雄)が言うのだから、信憑性は高いです。
君、どうしてバラすのだ!
恥ずかしいじゃないか!
君は僕のことを好きなはずだろう?
愛情表現ですっ!
『走れメロス』の楽しみ方
『走れメロス』に限った話ではないのですが(←いきなりかよっ!)、
文学は、作者ならではの表現や、文章の持つリズムを楽しむべきもので、ストーリーは、どーでもいいと思います(作品の持つ大きなテーマだけ、何となく把握するだけでオーケー!)。
もちろん例外もありますよ。
そして更に。余裕のある人には、登場人物の気持ちより「作者が何故その作品を書いたのか?」その作者の心情や作品の背景を読み取ることをオススメします。
そうすれば文学は、あなたにとって更に身近な存在となり、脚本のような小説を楽しむなんかよりも、ずっと有意義な時間を与えてくれると思いますよ!
これだけ楽しめて、この価格なのだから文庫本は救世主です! いや、もう神です!
また、Kindleストア内の青空文庫なら『走れメロス』を「無料」で楽しむことができます! 読書用のタブレットを手に入れてしまえば、あとは読み放題というわけです♪
『走れメロス』 まとめ
いかがでしたか?
作者である、太宰治の本当に伝えたかったこと、
について、お解りいただけましたか?
少しばかり茶化して書いてしまいましたが、ファンの方は怒ったりしないで下さいね。
私は太宰治が大好きです。その愛情ゆえの表現だとご理解下さい。
……。
文学をiPhoneで読みまくりたい人は以下の記事へ!
おまけ:文学とは?
最後に文学について。考え方のヒントをひとつだけ。
お金が無いから苦しい。──これは文学ではありません。
しかし、お金が無いのを解っているのに、見栄を張って、さらに大きな買い物をしてしまう。そんな自分の性格を変えたい。でも変えられない。苦しい。──これは文学です。
あ、もっと解りやすく。
ダイエット中だから食べられない。苦しい。──これは文学ではありません。
ダイエット中なのに食べてしまった。自分はダメだ。苦しい。
──これこそが文学です!
太宰風の掌編小説です。
お時間のある時にでもお楽しみいただけたらと思います。
コメントをどうぞ
素晴らしい 解説!
ありがとうございます!
最近、ブログの放置が続いておりますが(←)、また少しずつ記事を書いてゆこう──そんな気持ちになれました。
励みになるひと言、ありがとうございましたっ!
あかさたな
はまやらわ
分かりやすい!
嬉しすぎる!